XJRレーサー 注目のエンジン内部

 今日は朝から雪は舞うは、風は強いはで、これが春の嵐というものでしょうか?早くこの寒さが通り過ぎて、本格的な春になるといいですね。
 前回の日記でちょっとだけ触れたXJRレーサーですが、ドリームカップ1週間前の練習走行中突然エンジンが回らなくなり、異音もし始めたことから、エンジントラブルであろうということでレース参戦をあきらめ、エンジンをばらしてみることにしました。

 このエンジン、ベースとなっているのは公道で4万キロ以上を走った私の1200なのですが、多くのパーツを走行1万キロで事故にあいケースが割れた1300から移植しています。ピストンはワイセコの中でも比較的圧縮の低い(1200の)1mmオーバーサイズ、カムはヨシムラST-1で、ストリート車用チューニングのテストを兼ねてのレース参戦でした。レース仕様に組み直してから約2,100km走行していましたので、そろそろバラして各部をチェックしないといけないと思いつつもなかなか時間が取れず、今回のドリームカップが終わってからバラしてみようかということになっていました。
 一番気になっていたのはオーバーレブによるバルブジャンプとピストンの接触です。1200用シリンダーと1300用ベースガスケットの組み合わせで使っているので、スキッシュもバルブ−ピストンクリアランスもSTDよりはだいぶ詰めてあります。これまでの経験でこれくらいとれば大丈夫だろうという数字にはしていましたが、なにぶんボアの大きな空冷エンジンで、ピストンクリアランスも広いため、どれくらいピストンが首を振るのか分かりません。

 結果は全く問題ありませんでした。接触はありませんし、組む前にピストンスカートに施工したモリブデンコーティングも剥離せずに残っていました。リング下への圧縮漏れも見られませんし、シリンダースリーブも無傷と言っていいほどでした。

 次に気になったのが4サイクルエンジンの多くが問題を抱えるコンロッド大端メタルですが、こちらも全く問題ありませんでした。SSモデルに比べれば使用するエンジン回転数が低いこともあるのでしょうが、メタルの当たりは問題ないどころか、かなり優良な部類といえます。


 同様にクランクジャーナルメタルや、カムジャーナルも全く問題ありませんでした。このXJRレーサーは、エンジンオイルにBRAINSのRC40という化学合成のレーシングオイルを使っており、約500km毎にオイルエレメントと共に交換してきましたが、これら潤滑の問題が起きやすい個所の当たりを見る限りしっかりと機能しているようです。

 一方バルブ回りはというと、これまた大きな問題は見られませんでした。排気側のバルブフェイスはやや凹んでいるものの、2,000km以上全開でサーキットを走ったエンジンとしては通常範囲でした。
 総括すれば『エンジンは全く問題なし』じゃぁ何が問題?トラブルが出たのがレース1週間前で、慌ててエンジンをバラしたのが失敗でした。エンジンの異音も、吸気系あるいは点火系の問題できれいに燃えてない時の音と言えなくもありません。とは言ってもすべてバラした以上は、完全に組み立てて車載するまで点火系や吸気系のチェックはできませんので、まずはきちんとOHしてそれからチェックということになります。
 今回バラした感じでは、サーキット走行といえども3,000km位は余裕で使用できそうな各部の消耗具合でした。おそらく公道での使用でしたら、オイル管理さえしっかり行えば5〜10万キロは全く問題ないはずです。さすがにFJ1100から熟成を重ねてきただけのことはあります。とりあえずエンジンの消耗具合を確かめる第1段階は終了しましたので、次はジェネレーターやセルモーター関係のパーツをはずして軽量化とフリクションロスを少なくすることで、どれくらいエンジンフィーリングに変化が起きるのかの実験に入りたいと思います。実測したところではこれらのパーツを外すことで約8キロの軽量化となります。その多くがクランクシャフトに連動する回転物ですのでかなり違いが体感できるのでは...。当然『押し掛け仕様』になりますので、ライダーのチカちゃんは足腰を鍛えておいてください。以上業務連絡でした。