最新型の組み立て方

 最近は『寒いですねぇ』が挨拶代わりになっていますが、今日もやっぱり寒かった。ただ昨日までは昼ぐらいまで出なかった外の水道が、午前10時位には出るようになったので、多少は暖かいんでしょうね。
 シーズンオフのエンジンOHも順調に進んでいます。1基目のYZF-R6が終了したので、途中の様子を少しだけ紹介しようと思います。かななか最新型のエンジンの中身を見ることは少ないですからね。
 ST600/SS600クラスのベースモデルになるR6では、エンジンの小型・軽量化を徹底するために、シリンダーとクランクケースのアッパー側が一体構造になっています。通常の並列4気筒エンジンでは、主要部品はクランクケース(アッパー&ロワー)、シリンダー、シリンダーヘッドの3分割となるのですが、R6ではクランクケースとシリンダーが一体で、その上にシリンダーヘッドがのっかる構造になります。ここでエンジンを自分で組み立てたことがある方なら、『どうやってピストン組むの?』と思われたことでしょう。通常はクランクシャフトにコンロッドを組付けた状態でアッパー&ロワーケースに入れて、ケースを閉じ(アッパー&ロワーをボルトで留める)ます。それからコンロッドの小端側にピストンを組付け、その後シリンダーを被せるというのが通常の方法でした。ところがシリンダーとアッパーケースが一体なわけですから、この順序では組付けられませんね。じゃぁどうやるのか?

 先ずはピストンとコンロッドをピストンピンでつなぎます。そしてそのピストン&コンロッドを、シリンダーの上から挿入します。シリンダーをピストンに被せる場合は、ピストンが入りやすいようにシリンダーの下端面がテーパー上になっているのですが、上端面はほとんどテーパー面がありませんので、上からピストンを入れるのはかなり大変です。ヤマハ純正SSTにピストンインストーラーなるものがあるのですが、なかなかいい値段するので、私はもっぱら指先のテクニックで何とかしています。

 上の写真はピストン&コンロッドを挿入したアッパーケースを下からのぞいたところです。この状態でクランクシャフトを載せてコンロッドを取り付け、ロワーケースを被せてケースを閉じるんですね。03モデルまでのYZF-R1も同じ構造をとっていましたが、04以降はシリンダー剛性を確保するためにシリンダーとアッパーケースは別体のオーソドックスな構造に戻っています。ただし現行のR1ではエンジン幅を極限まで詰めるために、シリンダーピッチが狭く、隣り合うピストンのリングが干渉して、シリンダーを被せることができません。ですから予めシリンダーをアッパーケースに装着しておいて、R6と同じようにピストンをシリンダー上部から挿入する必要があります。極限まで性能を追求したSSモデルは、やはり組み立て方にもいろいろとノウハウが必要なんです。