つかみ損ねたもの

 ここ九州・熊本でも朝晩はずいぶんと冷え込むようになりました。さすがに日中暑いと感じることもなくなりましたし、これからは周りの風景も1日1日冬のそれへと変わって行くんでしょうね。
 ずいぶんと時間が経ってしまいましたが、先々週末オートポリスで開催された九州ロード・サウスチャレンジカップ第5戦の報告をしておきましょう。今年デーククラフトレーシングは、九州ST600クラスに太輔とTommy、サウスチャンレンジST600クラスに太輔、そしてJSBクラスにTomo47さんがエントリーしてきました。各ライダーとも自分の出来る範囲の中でベストを尽くした結果、第4戦終了時点で太輔は2ポイント差で九州ST600ランキング2位に付け、Tomo47さんはサウスチャレンジJSBランキングトップに立つことができました。最終戦となる第5戦は2人のチャンピオン獲得に向けて多くのみなさんに駆け付けていただき、大応援団の中でのレースとなりました。当日は台風通過に伴う雨雲の影響で朝から雨。午前中の予選はウェットで行われました。
 もともと雨が得意な太輔は九州・サウスチャレンジ両ST600でポールポジション、Tomo47さんも2番手に付けます。一方Tommyはこれまで最強の晴れ男ぶりを発揮して一度もウェット走行がなかったのですが、今回ばかりは最強の雨男p-y#41の前に屈し初のレインタイヤを経験、まったく滑らなかったと言うもののもうひとつ積極的に行けずに12番手で予選終了しました。

 午後からはいよいよ決勝レース。先ずはチャンピオンをかけて太輔が九州ST600に挑戦です。雨はあがったものの路面はウェット。レインタイヤでのレースとなりました。スタート後の1コーナーはやや出遅れたものの、すぐに2番手に上がるとトップを走るRSG川嶋選手を追いかけます。川嶋選手は太輔を2ポイント上回るポイントリーダー、このレースで前を走った方がシリーズチャンピオンとなります。両者それは十分に分かっていたのでしょう、川嶋選手は必死に逃げ、太輔は必死で追いかけます。その差が少しずつ詰りかけてきたときでした。トップを走る川嶋選手が転倒!太輔がトップに立ちます。レースはまだ序盤、追いかける目標がなくなってリズムを崩さなければいいのですが...。案の定次の周には太輔のラップタイムが明らかに落ちます。後ろからは2番手の選手が少しずつ接近してきます。『太輔焦るな』心の中でそう思った時でした、それまで2番手を走っていたRSG中迫選手がトップでホームストレートに帰ってきます。太輔まさかの転倒!残念ながらハンドルバーが折れてそのままリタイヤとなってしまいました。
 おそらく応援に駆けつけていただいた皆さんの多くが、これでチャンピオンだ!と思った矢先だったと思います。トップに立った時点でタイムが落ちようが落ち着いて走りきればよかったのでしょうが、そこが経験の少なさ、わずかな焦りが得意なはずのウェットで少しだけスロットルをワイドオープンにしてしまったようです。あと少しで手の届きそうなところまで来ていたシリーズチャンピオンは、まるで小説の中のストーリーのように、あっけなく逃げて行ってしまいました。これもレース、太輔にはこの悔しさを来年以降に生かしてほしいと思います。失敗なくして成長なし、頑張れ太輔!つづく