ステアリングステムベアリング交換

 今日はちょっとだけまとまった雨となりました。熊本地方は入梅後はじめてではないでしょうか。でも明日はまた晴れ間がのぞくようですから、本格的な梅雨はもう少し後になりそうですね。
 現在久しぶりにサーキットライセンスを取得して、もう一度スポーツ走行してみようというお客様の03YZF-R1をメンテ中なのですが、今日車両を押してちょっとした問題に気づきました。フロントブレーキを握ってフォークをストロークさせると『コクッ』という音がします。これはステアリングステムのベアリングから発生しているケースが多く、ステアリングステムのセンターナットを増し締めすることで直ることもありますが、ある程度の距離を走った車両ではベアリングそのものを交換しないと直りません。2万1千キロ強を走破したこの車両も、増し締めしましたが直りませんでした。

 となればベアリングを交換しなければなりませんので、写真の通りフロント周りがフリーになるようにスタンドで浮かせて、ステム廻りをバラバラにします。交換後センターナットの締め付けには微妙な加減を必要としますので、フロント周りを完全に浮かせてステアリングの動きをチェックできるようにするのがこの作業のポイントです。

 最新のヤマハ車はステアリングレスポンスと、組みつけの作業効率を考えて、写真のようにリテーナー付ボールベアリングを採用しています。回転物がボールの為、点接触で締め付けトルクの影響を受けにくく、テーパーローラーベアリングよりも締め付け作業に気を使わなくてすむいうメリットはありますが、耐久性はやや犠牲になっています。ですから車種や使い方にもよりますが、新車からノーメンテで使い続けると、2万キロ前後で問題が出るケースが多く見られます。多くの場合荷重の大部分を支持する下側のステムベアリングに問題が発生しており、写真の右側ベアリングレースのように目視でわかるほどの打痕があれば、ほぼ例外なく『コクッ』という音がするようになるようです。このまま使い続けるとステアリングのセンターあたりで引っ掛かりが出るようになりますので、最近交差点の右左折でなんとなく曲がりづらいように感じるという方は要注意です。毎日乗っていると体が馴染んでなかなか気づかないものです。『コクッ』といったら要注意ですよ。